
缶や金属といった資源ごみを盗むホームレスなどの人々に対して、どのように対処すべきか?
ごみ置き場に捨てられたアルミ缶や金属製の不燃ごみを、自治体と契約した回収業者以外の人が持ち去ることがあります。なぜならば、アルミ缶などやフライパンなどの金属廃棄物は、1kg集めれば150円ほどで買い取る業者がいるからです。
ホームレスの中には、こうした資源ごみを集めて売ることにより、生計を立てている人もいます。この他、自治体と契約していない業者が資源ごみを盗むケースも珍しくありません。
資源ごみの持ち去りについては、自治体も頭を痛めており、川崎市などでは、アルミ缶集めを禁止する条例を定めようという動きも出てきました。
このように、自治体が資源ごみ集めを禁ずる動きに対しては、ホームレスの生業を奪うものとして、市民から反発も出ています。
これに対して、自治体は、ホームレスの生きる糧を奪うつもりはなく、福祉サービスを利用して路上生活から脱し、自立した生活を送って欲しいだけだと説明してきました。
もっとも、行政機関が提供する福祉サービスには、多人数の共同生活を余儀なくされ、プライバシーが確保されないなどの問題点があります。したがって、福祉サービスを受けるため一旦路上生活から離れても、狭い相部屋の共同生活に耐えられず、ホームレスに戻ってしまう人も少なくありません。
こうしたホームレスの人たちに、生業となるアルミ缶集めを禁じても、他に生活費を稼ぐ手段がない以上、資源ごみ集めを続けざるを得ないでしょう。
アルミ缶集めが条例違反となったら、違法行為を続けるホームレスに対する住民の目も厳しくなります。ホームレスを排除しようとする動きが加速化し、少年によるホームレス襲撃といった犯罪を誘発する恐れもあります。
そもそも、ごみ置き場に出されたアルミ缶や金属製の不燃ごみは、リサイクルの価値があるとしても、いったん所有権が放棄された以上、たとえ持ち去っても窃盗罪や横領罪は成立しません。
刑法上の罪を問われない問題については、安易に個人の生活の根幹を揺るがすような条例を定めるべきではないという議論が続いているのです。